中井昭一 art Gallery

 全ての絵画はそれぞれに固有の構造を持ち、形や色彩が織りなす平面空間を形作っています。私達はそこに意味を持った唯一の形式を読み取ることが出来ます。絵画の場合形式とは、単なる媒体ではなく構造的な基盤となって意味を生み出していく生きた空間です。 広く世界を見渡してみても、同様に生きた形式を見て取ることは容易に出来ます。そこで形式は壮大な関係性として、世界や生命を形作っています。その中に人間が認識する様々な階層にある個々の存在は、システムを成立させている要素であり、全ての要素が全に関わっている関係性があります。関係性を組み立てること、すなわち、形式を創造することは色々な意味で世界を創造することだと思います。
 現代絵画は主題を捨て形式に表現の基点を据えることで、新らたな領域を獲得しました。印象派からはじまり、抽象絵画へ至る流れの中で絵画とは何かと問いながら、さまざまな表現形式が試みられ、形象世界とでも呼べる領域を少しづつ開拓してきました。絵画にとって形式とはいかに描かれているかという仕組みであり、色彩と形態と素材を関系付け独自の意味を創出するシステムです。絵画の構成要素間の関係性は一般的に空間・空気・構成・構造・バランス・構図などと様々な言い方をされますが、それは具体的に描かれている形態や色彩の共鳴であり、知性が感じ取れる『関係性のネットワーク』が生み出す世界感です。    
 作品の形式に現れる個々の図の配置や見え方が、形象が本来持っている感情に働きかけるエネルギーや、様々な情緒を醸成する視覚的インパクトを生み出します。

形態は構成されて行く過程で磁気に似た力を帯び、相互に関係し合う場を作ることで独自の形式を生み出す。

光の流れは色材のグラデーションになることによって実体化し、時間と空間のイメージを心に伝える色調の響きへと変換される。      

色彩は形式の中に取り込まれ、イメージの世界から現実の存在となり、心に響く強度を獲得する。色彩は形態の発する圧力へと変容していく。